釜山3泊4日1万1000円

[KOK 0072]

11 Nov 1997


釜山に行った。ゼミ旅行である。総勢22人のうち海外渡航経験者はわずか8人で、あとの14人ははじめての海外旅行という弱小メンバーであった。

しかし、海外といっも北九州を中心にみれば釜山は大阪よりも近いのである。「お気楽気分で荷物はできるかぎり少な目に」というのが出発前の私からの指令であった。なにしろ今回のセッティングの趣旨は、へたに別府なんかの温泉でゼミ旅行をするより、安くて移動も簡単、これにつきる。そこがたまたま海外なだけなのである。

関釜フェリーあるいは釜関フェリーをつかえば、まともにチケットを買っても交通費は2万円以下、今回はそのうえパックツアーなんぞに便乗してしまったので、3泊4日(うち船中2泊)ホテル付きで、1万1000円という破格なお値段だ。

ちなみに関釜フェリーと釜関フェリーは、下関と釜山を一日おきに交互に結ぶナイトフェリーであるが、前者が日本の会社、後者が韓国の会社で、似て非なるものと考えたほうがよい。船の中の様子はそれぞれのお国ぶりをよくあらわしており、ずたずたで安くておもしろいのは当然「釜関」フェリー。もちろん「こくら日記」のおすすめはこちらである。

さて、私はこれまでさんざん海外にいきながらパックツアーは、初めての経験であった。もちろん今回もツアーといいながら、日程表によると、拘束されるのは初日の午前中だけ。後はすべて自由行動なのだから、まあほとんど自分で旅行するのとかわらないのだが・・。

まず、ちょとだけこのパックツアー初体験について書いておこう。釜山につくと現地の旅行会社の人が観光バスといっしょに待っていた。パックといってもこの日の参加者はわれわれだけだったので、事実上うちのゼミの貸し切りであった。しかも、船の中でさんざん飲んだあくる日だったので、事実上ホテルのチェックイン時間までしばし睡眠をとるためにバスに乗るようなものであった。そのうえ、貧乏でお気楽な旅行を目的に釜山を選択したわれわれにとって、事実上免税店などなんの意味も無い。

バスに乗って、釜山タワーと国連墓地をちょっと観光して、あとはお約束の免税店ショッピングめぐり。パックツアーの低価格のからくりは、ショッピングにお客をつれていき、ツアー会社がお店からバックマージンをもらうことで成り立っている。しかし、われわれがなにも買わない事はわかってたし、みなはやく自分で街を歩きたがっていた。ガイドさんと交渉の結果、お店はとにかく行くだけ行って10分で出てくる。キムチ工場は行った事にして旅行確認証にサインだけしてキャンセル。たがいに利のある商談成立だ。

さて、釜山の街に出てみると、外国でありながら、どこかとても日本っぽい。もちろん両国の長い歴史的な交わりが(よくもわるくも)そういう社会を作り上げたのだろう。注意してみれば世界の多くの国々の中で、日本と朝鮮だけがもっている文化的な共通点というものはたくさんあるはずだ。いわば、世界でたった二人の双子国だ(北朝鮮もいれれば三つ子かな??)。

しかし、みためはよく似てるんだけど、育てられ方の違いから、性格はずいぶん違う。そこがおもしろい。まるで運命のいたずらによって別れたもうひとりの自分を見ているような感じ。パラレルワールドのような、オルターナティブな日本。

釜山は、とにかく活気がある。チャガルチ市場も国際市場も、どこからともなく人が湧き出してくる。屋台もたくさん出ており、これがまたおいしい。むこうに行っていたのは平日であるが、とてもそんな風には思えない。なんだか毎日がお祭りのようである。

こういう様子をみていると、どうして現代の日本の街にはこれほど活気が無いのか不思議な気がしてくる。人はたくさんいるし、物だってたくさんし、交通機関だって発達しているのに、街に元気がない。日本人っていったいふだんどこにいるんだろう。みな家でテレビを見てるのだろうか?

そして、なにかにつけアバウトなのも韓国の特徴である。道はそこら中が工事中でガタガタだし、あたりかまわず路上でなにか物が売られており、そのとなりではビルが解体されたり、その壊しかけの現場の中を人々が通行したり、とにかく適当なのだ。

一番驚いたのは、最近火事がおきたビルの中で、まだ焼けたままで放置されている場所に店を出して商売している人々。黒こげの壁のあいだで、きれいなお花やお菓子なんかを売っているのだ。とりあえず工事が始まるまで居座る気だろうか?

はっきりいって韓国の適当さにくらべれば、沖縄のテーゲーグァもかわいいものである。沖縄の「適当」が居心地のよいほんわかしたものだとすれば、韓国はもっとパワーのある強引な「適当」である。韓国人はみずからそれを評して「男らしい」という。なにが男らしいんだか・・、まあ、たしかにオジチャンが異常に元気のいい国ではある。

だけどみなそれで困っている様子もない。ときどきびっくりさせられたりもするけど悪くはない。もちろん清潔で正確な日本も、それなりの魅力があるのだけど、韓国みたいな社会に住んでいると、日本はとっても神経質なところに思えてくる。

韓国の人はおおかた親切でとっても人なつこかった。道の真ん中ででかい声で喧嘩するのにはちょっと困るが、そのへんもまあ慣れてしまえばどうってことない。街も人も魅力的だ。日帰り気分でちょっと遊びに行くにはもってこいの外国である。

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Takekawa Daisuke