旦過市場実習

[KOK 0133]

11 May 2000


今日はリーガロイヤルホテルで「朝食会」だった。小倉の町と人を考える各界の人々が、高級ホテルのレストランに集まって朝食をとりながら歓談するという集まりだ。まるでニューヨークやシリコンバレーのビジネスマンみたいでちょっとかっこいいでしょ?

3年ほど前に小倉南区が主宰した講演会「街のみかた人のみかた」で交流を持ち、ソロモンのイルカ漁の話題提供でさそわれていらい、2・3ヶ月に一回くらいの割合で会の案内をいただいていた。

これまで、なかなか都合がつかず欠席することが多かったのだが、今日の話題提供者は旦過市場協同組合の理事長。旦過市場私設サポーターの一員としては、なんとしても参加しなければならないだろう。

旦過市場は小倉が誇る水上マーケットである。近年、建物の老朽化にともない、この地域の再開発が計画されているが、どんなまちづくりを目指すのか、というのが今日の話であった。

旦過市場は、地元の人はほとんど自覚していないが、許されれば文化遺産として後世に残しておきたいような貴重な市場なのである。ぼくとしてはぜひともこ の機会に旦過市場にますます魅力的になってほしいのだが、再開発によってこれまでの雰囲気を変えずに、どう新しくするかが大きな課題であるように感じた。

たとえば沖縄の牧志公設市場や釜山のチャガルチ市場では、食堂と市場が協力して、お客さんが買ったものをその場で調理して食べさせてくれる。ただ買い物をするだけではなく、人々が立ち止まり憩う場所としての市場。

さて、「朝食会」で、そんな意見交換をするうちに、旦過市場協同組合の中村さんと近藤さんとすっかり仲良しになった。老人も若者も巻き込んで市場を舞台になにか楽しいイベントができたらいいね、なんて話をしていると、あるひとつのアイデアが急にひらめいた。

これまで北九大の経済学部が実習で旦過市場の再開発にからんだアンケート調査をしたことがあったらしいのだが、どうせやるならもっと根本的にアプローチしたい。市場の売り手と買い手の視点はどう違うのか。そもそも日常生活にとって市場はどういう場所なのか。

そこで、登場するのが得意のフィールドワークである(これしかないのかといわれそうだが、そのとおりである、これしかない)。毎年、非常に面白い報告を産出している二年生対象の社会調査実習であるが、今年はぼくがイギリスに行くせいで、後期の後半に設定されている。野や町にでてフィールドワークをするには、ちょっと寒い。どうしたものかと考えていたところである。

今年の社会調査実習では、30人ほどの学生を旦過市場の異なるお店にそれぞれ一軒一人づつあずかってもらう。できれば一ヶ月くらい。学生たちは店の手伝いをしながらいつもと違う視点で市場を見る、そしてそれをレポートにしあげる。これは現在の旦過の町の記録にもなるし、これからの市場のありかたを考える資料にもなる。

さらに年末年始の旦過の一番濃い時間を味わうことができるので、時期的にもベストである。うーん、なんて良いアイデアだ。さえてるさえてる。さっそくその場で旦過市場協同組合の理事長にお願いした。もう大丈夫。詳細は帰国後に詰めようと思う。

さて、今年の4月で小倉5年目になるが、ようやくいろいろな人との交流が実を結びつつあると感じている。この町は多くの人が思っている以上に面白い。ただだれもその面白さに気づいていないだけだ。今回の市場に限らず、幼稚園のオヤジの飲み会、藍島のスナメリウオッチング、トーナスカボチャラダムス、いろいろなものをリンクさせながら楽しみたいと思うこのごろである。

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Takekawa Daisuke