パソコン教室ビット
24 Jul 1999


「パソコン教室ビット・コンピューターいらぶ」を訪問した。入り口の看板だけは以前から見ており「こんな小さな島でどんな風にパソコンを利用しているのか」と気になる存在だったのだが、「でもまあ日本中のどこにでもあるごく普通のパソコン教室なんだろうな」とたかをくくっていた。

しかし、訪ねてみてその予想はおおきく外れた。建物に入るといきなり、クーラーのよく利いた部屋一面に、筐体をあけられ中が剥き出しになったPCが所狭しと並べられていた。まわりのたなにコードや部品が乱暴におきちらかされている。

部屋は初心者用(というより通常ユーザー用)とパワーユーザー用に仕切られており、パワーユーザーの区画には5人ほどの高校生と中学生がたむろしていた。コンピューターの内臓ハードディスクをとっかえひっかえしながら、なにかの設定をしている子もいれば、どこかの攻略ホームページを参照しながらネットワーク対戦のゲームにふける子供たちもいる。

ガレージのなかにガラクタをあつめ、あやしい装置を発明して遊ぶキッズ、そんなアメリカ映画にでも出てきそうな秘密めいた楽しげな雰囲気がそこにあった。

予想外の展開に感心しながら、そこの中学生たちにいろいろ教えてもらっていると、教室を主宰している譜久村喬さんが外から戻ってきた。譜久村喬さんは30代後半で、かつて沖縄本島の大学でコンピューターを勉強し、6年ほどまえに佐良浜に帰ってきてこの教室を開いたのだという。譜久村さんは体に障害をもっているが、そんなことを微塵もうかがわせないアクティブで面白いコンピューターの先生である。先ほどの中学生をはじめとしてコンピューターを勉強しにくる島の人たちからとても信頼されている様子だった。

室内のコンピューターはすべてLANでつなげられ、デジタル回線を経由してインターネットにつながっている。コンピューターの部品は福岡や東京に注文して取り寄せ組み立てるのだという。まさにインターネットの可能性が予言していた、分散型ネットワーク社会のスタイルを、目の当たりにしているように感じた。

そしてぼくは、今回はじめてフィールドに持ち込んだコンピューターをおずおずと取り出してみた。「これをLANにつなげてもいいでしょうか?」出発直前にいろいろなソフトをインストールするために差したままにしてあったLANカードが、まさか、こんなところで役にたつとは思わなかった。譜久村さんは快く許してくれた。


宮国明嘉くんがかいたCG

ぼくが大学で学生たちとホームページを作っているという話をすると、「ぜひここの子供たちにもおしえてやってほしい」という。譜久村さんは教えたいことがたくさんあるのだが、忙しくてなかなかすべて手が回らないのだという。「ほんとに自分が二人いたらいいのにと思うよ」そういうと譜久村さんは楽しそうに笑った。

島の子供たちは、とくに受験勉強という点において、日本の本土や大きな町にくらべハンディキャップがあるという話をよく聞く。島の生活はのんびりしている上にどうしても情報が不足してしまうのだという。しかし、このパソコン教室にきている子供たちは、ゆるやかな島の時間の中で、自分の手で最先端のPCをいじりながらそれを楽しんでいる。彼らがこのさきどんなふうにに成長していくのかとても楽しみである。


譜久村喬先生と大介

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Takekawa Daisuke