オレがヨ

[KOK 0098]

03 Mar 1999


君が代は
千代に八千代に
さざれ石の
いわおとなりて
こけのむすまで

私が小学校で使っていた音楽の教科書には、毎年必ず最後のページに「君が代」が載っていた。そして、その歌詞の注釈に「君=国民のこと」と書いてあったのを鮮明に覚えている。

今にして思えば不思議な注釈である。編集者は、ゲリラ的に民主的解釈を定着させようともくろんだ急進派冒険主義者か、あるいは言葉のすりかえで人民の追求を逃れようとした穏健派日和見主義者か?

天皇さまの時代は
1000代も8000代も
こまかな石が
岩(礫岩)になって
苔がはえてくるまで(続いてほしいものだよ)

私の受けた古典文学と地質学の知識がまちがっていなければ、この歌の解釈は以上の通りである。

たとえば、この歌の意味を日本を知らない外国人に教えたときに、いったいどういう反応が出るのか。ちょっと想像してみた。

まあ、たぶん最初の反応はこんなもんだろう。「”王様の世の中が、小石が岩に固まって苔が生えるまで続きますように”ってか、太平洋の東に浮かぶちいさな島の住民が、自分たちの王様を賛美するためにつくった、すこし背伸びしてるかんじの、なんとものんびりとした歌詞だねぇ」。実際、太平洋のどっかに似たような王様賛歌がありそうな気がする(偏見か?)。

しかし、この国が、世界有数の経済大国であり、1億人をこえる人口を有し、民主政体を標榜していると知ったら、たぶん「おいおい、ちょっと待てや」と驚くだろう。さらに、たかがこんな歌のために学校の校長が自殺し、21世紀も間近の時代に、この歌を国民に強制的にうたわせるための法制が審議されたりする国だと知ったら、驚きをとおりこしてだんだん恐くなってしまうに違いない。

日本はまだまだミステリアスである。

周回遅れの元ミーハー女子大生がスマップの曲を携帯の呼び出しに使おうと、オタク系父親が「『だんご3兄弟』よりも『ポリンキーの歌』のCDをはやくだせ」とレコード会社に抗議しようと、民族学者が「日本島民を研究するにあたって『君が代』もひとつの興味深い素材だ」と主張しようと、それは勝手である。好きにしたらいい。だけど、自分だけでやってくれ、大きなお世話は迷惑である。

だいたい歌なんてうたいたい奴が勝手にうたえばいいのだ。俺はオレがヨをうたう。

【60年代ワヤクチャ労働歌】
われらが世は
千代に万国の
飢えたる者よ
いわおのごとく団結せよ
暴虐の鎖たつ日まで

【70年代やさしいフォーク系】
キミヨのヨは
千代に八千代に
さざれ石の
肩までのびて
こけのむすまで
なのです

【80年代サラダ風味】
君が夜に
千代のことばっかり
言うから
2月11日は
げんこつ記念日

【90年代島歌バージョン】
わんが世(ゆ)は
千代に八千代に
ウージぬ森で
あなたと別れ
とわにさよなら

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