うまい野菜

[KOK 0061]

24 Jun 1997


かれこれ10年ほど前、初めてオクラを知ったころは、湯に通さずに生で食べていた。ちょっと渋いけど、そんなもんだと思っていた。

中国野菜のターサイは衝撃的なデビューだった。ロゼット状というか、円盤型の色濃い姿は、いいかにもアクの強そうな顔をしていながら、実際にはわりとさっぱりしたさわやかなやつだった。

里芋すなわちタロイモの仲間は、アジアや太平洋の島々で食べられている。台湾の蘭嶼でも、ポリネシアのクックでも、里芋好きのわたしは幸せだった。でも、このごろ日本で売られているセレベスという品種が、粘りがあって一番好きだ。みためはアカメイモやエビイモに似ているが、名前から推測するに、たぶんインドネシアのスラウェシ島あたりからきたのだろう。

ソロモンにはタウェアという名の、人の頭大の巨大な芋があった。味はジャガイモそっくりである。蔓性の植物で、標本も写真もあるのだが、まだ同定していない。新しい有用品種としていけるとおもう。タウェアを使えば直径40センチのポテトチップスも可能である。

経験的に、ニンジンは、先の丸い、ぼてっとしたもののほうが、甘くておいしい。

ほうれん草は、春先だけに出る葉がぎざぎざで丈の短い品種がうまい。このごろはなかなか手に入らない。葉の丸い品種は土臭くてよくない。

これも品種名は知らないが、しろい斑点がついてるイボイボキュウリも、昔のキュウリの味がしてうまい。だいたい、大手の種会社が一元的に野菜の品種をようになって、野菜はまずくなったと思う。このごろの野菜はハイブリッド種といって、ちゃんとした実がなるのは一代限りであることが多い。農家は毎年、種会社から種を買うのだ。へんな話だ。

幻のキノコ、マイタケはすっかり普通になってしまった。でもうまい。博多シメジという名で、売られている白くて太いキノコの歯ざわりもよい。

ウグイスサンゴというのは、カリフラワーとブロッコリーのあいのこらしい。みためがすごい、まさにフラクタルの世界である。そのためだろうか、あまり売れないまま市場から姿を消しつつある。が、味は悪くないし、もりつけようによっては奇抜でよい。

モヤシは何といっても緑豆モヤシがいい。普通のモヤシが38円くらいだとすると緑豆モヤシは48円くらいだ。たかが10円をけちるべきではない。緑豆モヤシはいためてもしゃきっとしたままである。豆本来の味わいがよい。

濃縮トマトは小倉で発見した。値段は普通のトマトの倍くらいする。みためも貧弱である。去年は、旦過市場など一部のお店しか扱っていないかったが、今年はずいぶんでまわっている。本州あたりでも売られ始めたようだ。フルーツトマトという呼び名もある。水をやらず極限まで枯らして育てるのだと聞く。なんでも原産のアンデスの山奥の気候に似せるのだという。あたりはずれがあるが、うまいものはまちがいなくうまい。今が旬である。

カイワレの凋落は目を覆うばかりである。そもそもの原価は不明だが、ひところパック90円くらいしたのが、今は20円だ。しかし、そのカイワレのかわりになれるかもしれないと、ひそかに注目しているのが、ヒマワリの芽だ。種ではない、芽だ。おおかたの予想に反してうまい。どうしてこれが今まで試されなかったのか不思議なくらいだ。食べきれずあまったら、庭に植えれば、夏には花が咲く。一石二鳥だ。スーパーで見かけたらぜひ買おう。

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Takekawa Daisuke