軍艦島・以降なのである

[KOK 0119]

24 Oct 1999


ときには日記らしく、日々のよしなしごとをつらつらと書くのである。

【10/16】

幼稚園での飲み会の2回目。今回は、幼稚園の先生たちも巻き込んで、題して「お世話になっている先生方のために肉を焼く男たちの会」。

今回もまた、もりあがった。幼稚園での焼き肉一次会だけに飽きたらず、河岸を変えて数人のお父さんたちと夜半過ぎまで飲んだのである。「子供たちがのびのびと遊べる幼稚園だと考えて志徳幼稚園を選んだ、そのうえお父さんまで遊んでもらえるとは、大変ありがたい」というお言葉をいただいたのである。みな遊び好きで、たいへんよい。

次回は「子供を男にあずけて女だけで楽しくやる会(仮称)」なのである。

【10/19】

あまりにいい天気なので、大学を抜けだし、ちかくの山に遊びに行く。帰り道、下りる谷をまちがえて、民家の庭先にでたのである。秋だ。

【10/22】

卒論の中間発表会やら北九大ネットの大更新やらで、とてもばたばたした一日である。

夜に、ゼミ生たちと、桜井大造ひきいる「野戦の月」の芝居を見にいったのである。テント芝居は学生時代に西部講堂でよく見たが、それ以来ひさしぶりなのである。

「風の旅団」のイメージで、学生たちには「なにせアングラだよアングラ。水に濡れてもいい格好と、燃えにくい服(?)でおいで」という、わけのわからない指示をだしておいたのだが、昔のような恐い感じはなかった。ドーム型の円形テントがかわいくて、けっこう正しく演劇しているような・・・かんじだったのである。

演題「EXODUS」は放射能と廃墟の物語。ちょうど、前日の木曜日の授業で、台湾の蘭嶼にある低レベル放射線廃棄物保管施設のビデオを見せたが、それと重なるのである。

そして廃墟。「軍艦島で演劇をしたら、素敵だな」と考える。あそこなら、特別な舞台装置はいらない。役者だけだ。なかなか良い企画だ。次に行くときは、そんなこともしてみたい。音楽と芝居は、廃墟によく似合うのである。

【10/23】

昨年に引き続き博物館実習の引率で「いとうづゆうえん(到津遊園)」にいってきたのである。

西鉄が経営するいとうづゆうえんは来年いちど閉園して、市の施設「動物のいる自然の森公園」として再出発する。いま、それをどんな公園にしようかという案が練られているのである。

園長、岩野氏は、実現は難しい話であるが、「たとえば動物園の中に老人養護施設をつくって、老人たちに動物の世話をしてもらったら・・」なんてことを語った。ああ、なるほど。それ、とても面白いとおもう。たとえ人の世話を受けている老人であっても、別のなにかの世話をするっていうのは大切なことなのだ。そんな施設ならぼくも入りたい。

とても柔軟で、とてもユニーク。動物園について知り尽くしている岩野氏ならではの発想。市の施設になったときにどこまで魅力的な施設になるのか未知数だが、こういう突拍子もない考えが実は一番有効だったりするのだ。だが、既成概念にとらわれている人を説得するのは難しいかも。

【10/24】

門司港に「万能の阿呆 トーナス・カボチャラダムス」の展覧会を見にいったのである。

思えば今から、8年前。京都百万遍の絵本専門店「きりん館」でたまたま見つけた一冊の本「かぼちゃ人類学入門」。海とカボチャを舞台にしたこの素敵な絵本に完全に魅了された。人類学はこうでなくてはいけない、若かったぼくはそう思ったのである。

その作者、トーナス・カボチャラダムス氏が北九州に住んでいると知ったのはつい最近のこと。ぜひ一度お会いしたい。そして、かれが造ったというカボチャ型のアトリエも訪ねてみたい。よし、これを機会に友達になろう。そう考えて、展覧会にいったのである。

あわよくばカボチャ入りのサインをしてもらおうと思い、8年前に買った本をもって出かけた。よい天気だった。しかし残念ながらトーナス氏にお会いすることはできなかったのである。会場の人に聞くと、ときどきふらりとやってくるのだが、いつくるかはわからないという。さすがなのである。

しかし、足を運んだかいがあって、トーナス氏にかんするいろいろな情報を手に入れることができた。氏は、退化人類研究所「カボチャドキヤ」の主任研究員をされている。人類進化論研究室出身であるぼくとしては、ぜひ、この研究所の客員研究員にしていただきたいのである。

そして「万能の阿呆」。おそれいった。ぼくは常々、神童から狂人、さらに愚民、そして最終的に阿呆にいたる人生こそが、人間最大の幸せであろうと考えている。狂気が抜けきらず愚かにもなれない今のぼくにとって、自ら阿呆を名乗るとは神のごとき存在である。しかも万能なのである。

彼が描く絵は、カボチャをモチーフにした閉じた居住空間のイメージ。あらゆる生活が詰まっている密集した共同体世界。それは、まさしく軍艦島。ああ、ここでもまた軍艦島である。トーナス氏は軍艦島にいったことあるだろうか。できれば一緒にいってみたい。そしてコンクリートの壁にカボチャの落書きをしたいのである。落書きは、廃墟によくにあうのである。

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Takekawa Daisuke