ディープコクラ

[KOK 0010]

21 Sep 1996


後期の授業がもうすぐはじまる、ほとんど準備をしていないからとっても気が重い。そこで、すべてを打開する画期的な作戦をたてた。

土曜日の4限の授業はフィールド学習と称して、書を捨て町にでることにする。小学校の社会見学ののりだ。毎週毎週、小倉の町のディープな場所を訪問する。学生にはそれをもとに4年次の卒論計画をすすめさせる。わたしは、趣味と実益をかねて「こくら日記」のネタをさがす。見学を終えたら、そのまま飲みに行くのもありだ、だって土曜日なんだから。

なにか、よいところを知っている人は教えてほしい。

こんなことを考えながら、北九州市役所にいった。とりあえず町の白地図でも手に入れようと思ったのだ。

どこの町でも役場には、その町を網羅した最新の地図がおいてある。そういう地図は国土地理院のものよりずっと使いやすい。しかし、驚いたことに、北九州市役所の売店には、都市計画図しかおいていなかった。あれれ、おかしいぞ・・と思って12階の都市計画課にいった。たいていの場合、地図は都市計画課の管轄である。

たしかに、そこには目的の地図があった。しかし「ここでは売れない」という。「必要なら1階の売店で注文しろ」という。あれれ、さっきはそんなこといってなかったぞ。再び1階の売店に、すると都市計画課にあったものとはにてもにつかぬ青焼きの地図をだしてきた。「これなら注文すれば焼く」いう、話がちがうぞ。

ふたたび12階へ。「売ることはできない」の一点張り。なんだ、こいつらは?ただの町の白地図だぞ。知らない間に戒厳令でもしかれたか。対応が異常にわるい。

そこで、やむをえず伝家の宝刀を抜いてしまった。「北九州大学で研究のために必要なのだが」。北九州大学は市立である。いわば、おなじ市の管轄にある組織である。あいての態度が少し変わった。

「それでしたら、担任の先生に、書類をつくってもらって印鑑をおしてもらって、郵送してください」。わたしは、そのときけっこうカジュアルな姿をしていたので、学生にまちがえられたらしい。「わたしがその先生なのですが」そういうと、あいての顔がこわばる。役人の弱点は、水戸黄門の時代から、内輪と権威である(わたしの権威など、たかがしれてるが、それでもこういうときは通じるらしい)。「ここでその書類をつくることは可能ですか?」。あくまでも慇懃にたづねる。

あわてた職員「ちょっとお待ちください」。待つこと5分。「大学の事務を通して書類を送ってくれ」という。けっきょく地図は手に入らなかった。

帰り道、ちょっと悲しくなった。なんで、あの人はあんなに、いかにも役人みたいな反応しかしなかったのだろうか。いつからあんな人になったんだろ、生まれつきではないとおもう。つらいことがあったのかな。それともあれはしたたかな見せかけの演技?

ほんとうは、おもしろい人かもしれないのに、ぜんぜん顔がみえない。飲み屋で会ったらきっともっと違うこというんだろうなぁ。いい、おっさんなんだろうな。「お笑い小倉役人極秘情報」なんてネタどうだろ。役人の本音をリサーチしちゃうの、でも大蔵省官僚にくらべたらスケール小さいよなぁ、小役人だもん。どうせ、巨人が勝ったの負けたの、くだらないことしかいわないだろうしな。

まあいいか。

(お役人関係と原則主義者と巨人ファンのみなさんごめんなさい。  ばってん、くだらんものは、くだらんばい。)

New▲ ▼Old


[CopyRight]
Takekawa Daisuke