腰痛のこと

[KOK 0006]

11 Sep 1996


おひさしぶりです、クック諸島から帰ってきました。こくら日記の再開です。いやぁ、しかしまあ、なんですなぁ。

クックでの調査の報告は、おいおい書いていくことにいたしましょう。あいかわらず、面白いことがたくさんあったフィールドでした。でも今日は、そういった話はおいときます。

調査を終える最後の週までは、なんだかんだいって、まったく健康でなおかつ順調に生活しておったのです。気候もおだやかで、変な風土病もほとんどないポリネシアの島は、これまでのどのフィールドにくらべても快適なところでした。

いま考えると、ちょっと油断していたのかもしれません。村一番の漁師のところに弟子入りし、彼は期待を裏切らず、大物の魚をどんどん釣り上げていました。そんな毎日でした。

衝撃は突然きました。夜、海が荒れてきたので、浜でカヌーを上の方に移動させようと、持ち上げたときのことです。「ああっ、これはまずいぞ」という気が一瞬はしたのです。しかし、「まあ、いいかな」とそのまま曲げた背中をのばしたときに、わたしの背筋は臨界点をこえ、椎間板がメルトダウンをおこしました。

これが世にいう「ぎっくり腰」だと知ったのは、少しあとになってからでした。調査は最後のまとめが不十分のまま中断となり、日本に帰るまで、寝たきり生活。それでもなんとか帰国が可能なくらいには回復し、ちょっと無理をしながら飛行機で帰るうちに再び悪化、帰国後も不自由な生活を余儀なくされておるところです。

医者には、背骨の神経にちょっと傷がはいっているかもしれない、といわれました。整体師には、日頃の正しい姿勢がいかに大切であるか、説教されました。

しかし「ぎっくり腰」とは、ひどい呼び名です。まるで、「しゃっくり」か「ひょっとこ」みたいな、そんなのんきな名前をつけた人のセンスを疑います。かくいうわたし自身も、これまでちょっとバカにしていたところがありました、反省します。あれは痛いです。「突発性腰背骨激症炎」とでもいうべき、どこにだしても恥ずかしくない立派な傷害です。

そして、腰を痛めて、はじめて、世の中には、たくさんの腰痛仲間がいることがわかりました。あう人あう人、「実はおれも腰痛持ちでなぁ」などと話しかけてくるのです。みんな、痛みを隠して生きていたのですね。なんだか心温かくなりました。やっと一人前の大人になった気持ちです。そして、だれもが口をそろえて(なおかつうれしそうに)「これは、一度なったら、なおらないよぅ。体に爆弾かかえてるよなもんだよぅ」などというのです。

いまや、わたしは箸より重いものも持てない役立たずです。無能者です。

さて、そんな、無能者に帰国後、待ち受けていた運命とは・・・。つぎに続く。

*「日本腰痛友の会」入会希望のかたはお返事を。

*とりいそぎ、リハビリをかねてこくら日記を書いております。不在中にいただいたメイルのご返事は、おっていたしますのでしばしお待ちねがいます。

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Takekawa Daisuke