七夕コンパとその余波

[KOK 0003]

17 Jul 1996


ちょっと時間がたってしまったが、7月6日のことである。その日はかわいいかわいい女子学生との、たのしいたのしい七夕合コンが予定されていた。昼間のうちにわたしは小倉の街を徘徊し、七夕コンパにむけて万全の体制でのぞむべく、準備を着々と進めていた。

そして、ついに、小倉のまちでおいしいビールを売っている店と、おいしいお酒を売っている店を発見した。その「古武士屋」という名の、ちょっとしゃれた輸入洋酒店には、わたしがこのところ世界一おいしいビールとよんでいる、 Hugurden Gran Cru と、Delirium tremens が、ずらりとならべてあった。小倉にきてからずっとさがしていたビールだ。

そして、その近くには、一見ただのコンビニのようにみえながら、地下がまるごと冷蔵庫になっている、「野上酒店」というお店まで発見した。

「野上酒店」のこだわりは尋常でなく、コクがあり吟醸香の高い日本酒に関しては、東京や大阪にもないような完璧な品揃えを誇るお店であった。わたしは思わず店長と、二時間あまりも酒談義をしてしまったが、彼の情熱と知識には心うたれるものがあった。私たちは意気投合し、これからの日本酒のありかたまでも語るのだった。

だが、しかし、なんという悲しいめぐりあわせであろうか。わたしが、そのすてきな野上店長に出会ったその日は、まさに「野上酒店」最後の一日だったのである。数ヶ月前に交通事故にあい、いまも後遺症に苦しむ店主は、こんな体で酒を扱うことは、お客さんと蔵元に迷惑をかけると判断し、地下の酒蔵を閉鎖し、コンビニ経営一筋でやっていく決心をしてしまっていたのだ。

わたしは、かえすがえすも残念な気持ちを店長につたえ、おすすめの「東一」大吟醸を買い込むと、店をあとにした。

そして、夕方、いよいよ、七夕合コンである。この合コンというのは、そもそも、社会学の教官とわたしがふたりで計画し、教え子である女子学生たちだけをあつめて、教官と女子学生の合同コンパをするという、公私混同・職権乱用のまことにおいしい企画のはずであった。しかし、徳がたりなかった。

あつまった女子学生はわずか4名。肉や酒は大量にある。このままでは、盛り上がりがたりない・・。けっきょく、急遽そのへんの男子学生をかきあつめ、われわれは、たんに学生のコンパのお手伝いをするという、本末転倒の役回りとなってしまった。

そして、その夜、さらなるバチがあたった。

実はその日は、北九州ネットワーカーズフォーラムの飲み会も小倉の町でひらかれていた。そのメンバーに、必ず女子大生を連れていく、と約束していたわたしは、かろうじて約二名の学生を説得し、夜更けの魚町に連れ出すことに成功しのだ。

がははは、つれてきたぞー。わたしは、有頂天であった。

すでに、相当なアルコールを摂取していた。うまい酒は危険である。酩酊したわたしは、小倉の町のどこかで、大切なカバンをなくしてしまった。どこでなくしたのか、よくおぼえていない。

さて、本来であれば、この「こくら日記」は、7月7日に創刊されるはずであった。しかしそれが、もうすぐクックに出発という、今日の今日まで遅れてしまったのは、すべて、この夜のできごとに起因する。カバンの中には、LANアダプターが入っていた。そして、大事な大事な電子手帳ザウルスも入っていた。

今日、ようやく注文していたLANアダプターがとどいたところだ。ザウルスの中にはプライベートなデータも入っていた、今となっては悪用されないことを祈るだけである。

というわけで、「こくら日記」波瀾万丈の幕開けです。

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Takekawa Daisuke